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生きている証。


前にもブログで書いた事。

役者の【やりたいこと】と【やらなければいけないこと】というのは、役者が演じる人物の立体化の過程で、必ずしも一致しない。

一致していれば何も問題なく、問題が無い中での、人物に近づくための問題を発見して、段々と自分の演じる人物が見えてくるのだと思う。

一致していない場合、【やりたいこと】が強いと【やらなければいけないこと】が煩わしくなり、段々と【やりたいこと】だけをやってしまう。

それは、自分思考で舞台の上に立っているという事になり、登場人物の人生を歩んでいるのではなく、自分の人生を歩んでいることになる。

登場人物の思考や感情や心情を探すこと、それを具現化させることが役者の【やらなければいけないこと】だと、俺は思っている。

思考とはその人物の状況と心境から『今』をどうあるべきか考えること。
感情とはその人物の周りで起こっている事や他者から何らかの影響を受けた『今』を感じること。
心情とはその人物の心の中で『今』思っていること。

日本語だからニュアンス的にはわかっているのだろうけど、そのニュアンスというのが曲(くせ)になる。ニュアンスとはあくまでもニュアンス。感情移入しろといえば、ただただ声を張り上げる、そんなのは感情移入ではない。

喜怒哀楽という言葉がある。然し、人間の感情は、その4つだけではない。喜怒哀楽の四文字の間に無数の感情がある。もっといえば、喜怒哀楽の【喜】にも無数の【喜】がある。他の怒哀楽も同じだ。

無数の感情には、無数の理由がある。
その理由を探る事、近視眼的にではなく、深層心理の面から探ってほしい。

自分発信で進めなきゃいけない時もあるだろうけど、それにも理由がある。そして自分から発信するのなら、それを受信する相手がいるという事だ。自分から発信して相手が受信した時に相手はどんな顔をしている?どう感じたと思っている?そして何を言う?日常ではそれが当たり前で生活を送っている。そのことの思考は一瞬で回る。

芝居だと、その一瞬が回らない。何故なら、次に何を言うか、その次に自分は何を言わなければいけないのかを知っているからだ。

相手の発信を自分が受信した時に、何を思う?感じる?動く?それは相手の発信したモノをちゃんと受信しない限り、何も生まれてこない。ただ、用意された台詞を放つだけで終わる。 今回も徹底的に、そのことに拘りたい。

生命漲る登場人物たちを生命溢れる役者たちが演じるような。

ちなみに冒頭で書いた【やりたいこと】と【やらなければいけないこと】というのについて、どんな戯曲の登場人物をやるにしても、役者の【やらなければいけないこと】というのが【やりたいこと】という認識だと、その役者は登場人物の存在を探す。

これって自分が好きなのか、芝居が好きなのかっていう話にもリンクする。

自分は、どっちなのか?その事にすら気付いていない演者も演劇界には多い。自分を認識することは自分の方向性や可能性を見出す要素にもなるのではないかと思う。

心とは目に見えないものだ。どれだけ演者が、自分は心で演じていると言っても、果たして、その心が客席にいる人間に見えるのか?見えていなくとも、自分は心で演じているんだと開き直るのか?見えないと言われたら見えない人間が悪いとでも言うのか?それとも自分の非力を痛感するのか?



現在の稽古。

演出的に段々と踏み込んでいる。
演者たちに色々と問う。

納得しているか、ではなく、認識しているかを問う。勢いなんかで芝居をしてほしくない。いや、勢いも大事だけど、もっと大事な事がある。それを言葉にするのは簡単。だからしない。

俺は余力なんか残したくない。
今までに培ったすべてを費やしたい。
演者たちにも、それを求める。

無いものは出ない。
あるものしか出ない。
然し、あるものも出せないのなら、それはせつない。
あるものを出し切った時、無いのもを、やっと得る。

それが成長だと思っている。

俺は演者たちをリスペクトしている。
だからこそ、本気で向き合う。
彼らが、俺をどう思っているのかなんて考えない。
俺が彼らをどう思っているのか、そこに比重を置いている。

ほんの少しだけ、本当にほんの少しだけ、やっと演出というものが、わかってきた気がする。

やりたいだけじゃ出来ない。
理解していないと。
演出とは、何をする人なのか、認識していないと。

散々、やりたい放題にやってきた。
それを見守ってくれる人たちがいるということを知った。
そして、応援してくれる人、俺を信じてついてきてくれる人がいるということ。

その支えの上で俺は生きている。
うん、俺は生きているんだよ。

温度がある。

『愛、あるいは哀、それは相。』にも温度を吹き込む。

それが俺の精一杯の生きている証。



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